介護の現場では、社会人経験を経て転職し、介護福祉士になった人がたくさんいます。
前職のキャリアは、保育士や営業職、建設業など、多種多様な人たちが、今は介護の現場でスペシャリストとして活躍しています。
私も、サービス業を中心としたアルバイトを8年転々としたのち、介護の現場に入りました。未経験ながらも必死に学びを続け、働きながら介護福祉士を取得、現在はケアマネジャー資格も取得しています。
このように、未経験でも参入しやすいのが介護の世界です。
そんな介護の世界に興味を持ったけど、「未経験でも介護福祉士になれるの?」と疑問に感じている人もいますよね。
実は、介護福祉士は、一定の受験要件を満たした後でなければ、試験すら受験することができません。
でも、安心してください。
未経験でも段階を踏んでいけば、介護福祉士には必ずなれます。
この記事では、実際に働きながら介護福祉士を取得した経験から、社会人が未経験で介護福祉士に取得するまでの道筋を解説します。
介護福祉士とは介護現場のスペシャリスト
介護福祉士とは、介護の仕事に必要な知識や技術を十分に備えていることを示す国家資格です。言い換えれば、介護現場のスペシャリストともいえます。介護福祉士の資格には、次の2つの特徴があります。
介護福祉士は介護職唯一の国家資格
介護福祉士は、介護に関わる資格の中で唯一の国家資格であり、試験に合格した人だけが名乗る名称です。
介護福祉士にしかできない業務はないため、介護の現場には未経験者から介護福祉士まで、さまざまな人がそれぞれの知識や技術に応じた役割を担いながら、業務に携わっています。そのような現場において、介護福祉士は、専門的な知識と技術を有するスペシャリストとしての役割を持っています。
実際に、施設の介護リーダーや責任者は介護福祉士資格を有する人から選ばれることがほとんどです。私が働いていた入所施設やデイサービスでも、介護リーダーや管理者は介護福祉士の資格を持っていました。
また、介護保険においても、国家資格である介護福祉士の存在が高く評価されています。介護サービス事業所の収入にあたる介護報酬には、介護福祉士の配置数によって加算がつく仕組みとなっています。事業所としても、介護福祉士資格を有する人の存在は、重要なものとなっていると考えられるでしょう。
介護福祉士には受験要件がある
介護の現場で重要な役割を果たす介護福祉士は、国家資格であるため試験を受験する必要があります。この試験を受験するためには、次のいずれかの受験要件に該当していなければなりません。
・介護福祉士課程のある養成校を卒業
・福祉系高校を卒業
・3年の実務経験と実務者研修を修了
社会人から未経験で介護福祉士を目指すのであれば、「3年の実務経験と実務者研修を修了」をオススメします。なぜなら、介護の現場では、未経験者歓迎の募集が多いため、未経験でも実務経験を積みやすいからです。また、働きながらであれば一定の収入を得ることができるため、それまでの生活も維持しながら、資格取得が目指せます。
私は、高校卒業後フリーター8年という、就職には非常に不利な条件でしたが、それでも介護未経験ながら正社員として介護職員になることができました。異業種からの転職のハードルが低いので、他職種から転職する人も多く、同じ境遇の人もたくさんいます。
働きながら経験を積んでいくと、試験合格に必要な知識や技術も頭に入りやすいでしょう。実際に、私は介護福祉士試験に一発で合格しています。周りの転職組の人も、ほとんどが一発合格しているので、未経験から介護福祉士を目指すのであれば、実務経験ルートが効率的でもあり、現実的でもあるでしょう。
介護福祉士を目指すなら実務者研修が必須
介護福祉士になるためには、実務者研修の修了が必須となります。実務者研修には、受講要件がないため、年齢経験関係なく誰でも受講することができます。実務者研修と似た資格である初任者研修との違いや、実務者研修の受講の仕方をまとめてみました。
介護福祉士を目指すなら初めから実務者研修を受講しよう
実務者研修とよく似た資格に、初任者研修があります。初任者研修も実務者研修と同じように、介護の知識や技術を学ぶことができます。初任者研修と実務者研修のどちらを受講すればいいか、迷うこともありますよね。未経験から介護福祉士を目指すのであれば、実務者研修を選ぶべきです。なぜなら、初任者研修には介護福祉士の受験資格がないからです。
また、初任者研修は基礎的な知識と技術に重点を置いているのに対し、実務者研修はより実践的な知識と技術の習得を目指しています。未経験無資格から実務者研修を受講する場合は、初任者研修の内容も実務者研修で学ぶことができます。ひとつの研修で効率的に学ぶことができる点も、未経験者に実務者研修をオススメしたいポイントといえます。
初任者研修と実務者研修の違いを表にまとめました。
初任者研修 | 実務者研修 | |
習得目標 | 基礎的な知識と技術の習得 | 実践的な知識と技術の習得(痰吸引、経管栄養の管理含む) |
学習期間 | 平均3ヶ月(最短1ヶ月) | 平均6ヶ月(最短3ヶ月) |
費用 | 3~10万円 | 10~20万円(保有資格によっては8万円以内のことも) |
介護福祉士受験資格 | なし | あり |
実務者研修が受けられる3つのパターン
実務者研修を受講するパターンは、大きく分けて3種類あります。
職業訓練
実務者研修は、職業訓練対象講座となっているため、職業訓練として受講することが可能です。職業訓練であれば、テキスト代と交通費以外は無料で受講することができ、受講費用を抑えることができます。また、失業保険を受け取りながら学べるだけでなく、一定の条件を満たしていれば職業訓練受講給付金として毎月10万円が受け取れます。
平日昼間に通いながら対面で学べるので、必要な知識や技術がしっかりと学べます。
現在無職の人や、すでに退職が決まっている人であれば、職業訓練で受講する方法も検討してみるといいでしょう。
職業訓練を受ける実際の流れは次のようになります。
①ハローワークで求職申し込みをする
窓口で職業相談の予約をします。ジョブカードを渡されるので、職業相談までに記入します。
②職業相談で実務者研修を受けたい旨を相談する
キャリアカウンセラーと面談します。介護の仕事に適性があるか、実務者研修を受けることが妥当な判断なのか、ジョブカードの内容と照らし合わせながら確認します。
③実務者研修の受講申し込みを行う
職業相談の結果、実務者研修を受ける必要があると認められたら、実務者研修の申し込みができます。
④講座の選考面接や筆記試験等を受ける
職業訓練の講座の場合、事前に必ず選考面接や筆記試験などがあります。介護の仕事に興味があり、将来的に介護福祉士の資格を取得したい旨をしっかり伝えるようにしましょう。
⑤選考通知を持ってハローワークに行き、受講あっせんをしてもらう
合格の選考通知が来たら、ハローワークに持参して、受講あっせんの手続きをします。
⑥受講会場にて職業訓練が受講開始となる
受講開始日に受講会場に行き、いよいよ職業訓練が開始となります。
通信講座
働きながら実務者研修を修了するのであれば、通信講座が便利です。実際に介護現場で働いているのであれば、学んだことを仕事現場でそのまま活かすこともできるため、知識や技術の習得が早くなります。これから転職して介護福祉士を目指す人であれば、通信教育で資格を取得することで、未経験でも介護職に就きやすくなります。
ただし、実務者研修の場合、通信講座でもスクーリングが必要な科目があります。スクーリングの回数は講座を主催する会社によって変わるものの、6~10回は必要になります。働いている人でも通いやすいよう、平日の夜や土日等に設定されているケースが多いでしょう。
また、教育訓練給付制度の対象となっている講座も多いため、社会人経験がある程度あれば費用面も抑えることができます。
私のオススメの通信講座は、ニチイです。
ニチイは、1996年から介護講座を実施しており、その指導には長い歴史があります。介護事業所を運営していることもあって、講師陣も経験豊富な人がそろっています。また、スクールが駅近くにあることが多く、ニチイが運営する介護事業所に併設しているケースもあるため、スクーリングに通いやすいという利点もあります。
魅力的なのが、研修修了後にニチイの介護スタッフとして働くと、講座費用が全額キャッシュバックされる点です。先にニチイの介護スタッフとして就職し、研修を受講した場合も、受講料を全額支援してもらえます。この制度には適用条件がありますので、詳しくはニチイの公式ホームページでご確認ください。
通学講座
実践者研修は、通学講座を実施しているところもあります。通学講座は、対面で学べるため、通信講座に比べると必要な知識と技術の習得が早くなります。
しかし、仕事をしながら通学講座に通う場合、全日程の参加を確保しなければならず、職場や家庭の理解が必要となります。また、地方の場合、実施していない地域もあります。
ある程度の時間が確保できて、近場で通学講座が実施されている人であれば、通学講座も検討してみるとよいでしょう。
介護福祉士になるために必要な実務経験の積み方
介護福祉士になるためには、3年の実務経験が必要です。実務経験には一定の条件があり、働く場所や働き方によっては、実務経験が認められないケースもあります。実務経験に該当する分野のうち、未経験者が参入しやすい高齢者と障害者分野における実務経験の範囲は以下の通りです。
高齢者分野
介護保険サービス事業所で働く介護職員は、介護が主たる業務であれば介護福祉士試験の実務経験として認められます。
ただし、訪問介護のサービス提供責任者や事務員、清掃員などは、介護に直接関わる業務ではないため、実務経験として認められません。
例えば、デイサービスの職員である場合、デイサービスで直接介護業務をしていれば実務経験としてカウントできます。一方、送迎スタッフとして働いている場合は、送迎が主たる業務になるため、実務経験にはあたりません。
また、病院で介護職員として働いている人の場合、所属する病院がどのような機能を持っているかによって、実務経験になるかどうかが決まります。大学病院や医療センターのような中核病院の場合は、実務経験として認められないケースがほとんどです。
一方で、リハビリを主体とする病院や、介護医療院を有する病院など、長期療養を目的とした病院の場合は、実務経験として認められることが多いでしょう。私は病院勤務でしたが、介護福祉士の実務経験として認められ、介護福祉士試験を受験することができました。これから病院勤務を検討する場合は、面接時に実務経験として認められるか確認しておきましょう。
障害者分野
障害者分野では、障害者総合支援法に基づく施設や事業所で働く介護職員や介助員であれば、実務経験として認められます。
就労支援施設や児童デイサービスなどの場合、介護が主たる業務であれば認められますが、生活支援員や指導員などで介護に携わらない場合は、実務経験となりません。
ヘルパー業務については、高齢者分野と同様に、訪問介護業務やガイドヘルパーなど直接介護に携われば実務経験となります。サービス提供責任者は実務経験から除外されます。
介護福祉士試験は独学で合格できる
実務者研修を修了し3年の実務経験を経たら、いよいよ介護福祉士試験を受験できます。
介護福祉士試験は、毎年1月末に実施されており、合格率は70%前後となっています。これまでの知識と経験をもとに、勉強していけば決して合格できない試験ではありません。私も独学で一発合格しています。介護福祉士は、ポイントを押さえていけば、独学で合格できる試験と言えるでしょう。
介護福祉士の合格基準は2つある
介護福祉士試験に合格するには、次の2つの要件を満たす必要があります。
全体の総得点が60%以上
介護福祉士試験は、全体の総得点が60%を基準として、その年の難易度によって補正がかかります。そのため、毎年の合格基準点はかわるものの、総得点が60%以上あれば、概ね合格できると思ってよいでしょう。
11科目群全てにおいて得点があること
介護福祉士試験では、出題範囲が11科目群にわかれています。介護福祉士の特性上、幅広い知識が要求されることから、11科目群全てで得点を得なければ、合格基準点を超えていても合格することができません。一発合格をめざすのであれば、出題範囲全てにおいて、まんべんなく勉強しておきましょう。
独学で学ぶなら問題をひたすら解こう
未経験者が介護福祉士試験を受験する頃には、試験に必要な知識や技術は身についています。独学でも一発合格は十分に目指せる状況と言えるでしょう。
独学で学ぶ方法はたくさんありますが、私のオススメは問題をひたすら解いていく方法です。一問一答から始め、慣れてきたら過去問、仕上げで予想問題と解いていくことで、段々と試験に合わせた解答力がついていきます。
問題をひたすら解く方法で勉強するときには、解説が細かくわかりやすいものを選ぶようにしましょう。わからない問題がでてきたときに、解説がしっかりしていると理解しやすくなります。
私はユーキャンのシリーズを使っていました。ユーキャンの問題集は、どれも解説が分かりやすいので、テキストを追加で買うことなく必要な知識を学ぶことができました。また、赤シートが付いていることも多いので、仕事の昼休みや夜勤の合間に勉強しやすいという利点もあります。
また、YouTubeの介護福祉試験対策の動画も併用すると、より理解が深まり合格しやすくなるでしょう。
未経験でも介護福祉士を目指す方法まとめ
介護福祉士の資格は、残念ながら未経験からすぐに取得できる資格ではありません。介護福祉士資格を得るためには、3年の実務経験と実務者研修を修了する必要があります。
しかし、介護の現場では未経験者を歓迎しており、異業種からの転職がしやすい状況です。実際に、異業種からの転職者の割合も多く、30~40代の人が多く活躍しています。
受験資格である実務者研修は、年齢経験問わず誰でも受講できるため、未経験者でも取りやすい資格のひとつです。
また、介護福祉士試験は、受験要件を得る過程で学んだ知識と技術の集大成であるため、独学でも合格が目指せる試験となっています。
このように、社会人から未経験で介護福祉士になるためには、時間がかかるものの、未経験者でも取りやすい資格であるといえます。
介護福祉士が気になったら、ぜひ介護の現場に飛び込んでみましょう。
未経験者でも温かく迎え入れてくれますよ
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